症例④ ポステリアバイトコラプス咬合崩壊症例

①初診は2017年5月、57歳男性で、右上のブリッジが脱離したとのことで来院。
右上ブリッジは歯が破折しており、左上も痛くて咬めずに外したため、噛むところが無い状態でした。
正面のスライドから前歯が左から右へ傾斜しており、前歯も全体に厚い形態になり、前突した状態で、前歯のブリッジも動揺を認め、数回にわたる脱離を繰り返していたとのこと。
また、破折・安易な抜歯を繰り返したために上顎前歯の歯肉が大きく陥没しているのわかる。
また、過去に欠損部にパーシャルデンチャーを装着するも違和感があり装着が出来なかったとのこと。 この方の場合、臼歯部での咬合支持が無くなり、元々持っている個体差の中で、前歯部突き上げられ前突していったとポステリアバイトコラプスになっている。

②ポステリアバイトコラプスの症例では、臼歯部にしっかりとした咬合の支持を与えないと前歯を守ることはできない。
そのため、全顎治療を行い咬合の再構成を行なった。上顎前歯の歯肉が再生し左右シンメトリーな形態になっているのがわかる。
欠損していた部位にインプラント治療を行い、臼歯部での咬合支持をしっかりとさせた事により、力のバランスがとれ、とてもよく噛める様になったとのこと。
また、歯の状態も悪い部分も多々認めたが、出来るだけ多くの歯の保存に努め治療を行なった。上顎左右7は、咀嚼力も強く、審美的に見えない部位であるため、メタルクラウンを装着している。

③治療前の上顎面、左上大臼歯部は重度のカリエスになっている。左右の臼歯部は補綴設計で無理な設計をしたために、右は歯根破折、左はカリエスの信仰を認め、咬合の崩壊を早めたと思われる。どの様な形で歯が無くなっていくのかを予測せずに、治療を行うとこの様な結果になるのだと改めて気づかされる。

④インプラントおよび補綴治療のやり変えを行なったとこにより、左右均等な歯列の獲得ができているのがわかる。左上の重度カリエスは歯の保存を行なっている。

⑤治療前の下顎咬合面、右下に欠損を認め、右下に突起状の入れ歯用のアタッチメントが装着されている。以前、右下には入れ歯を装着していたが、咬めずに違和感があったため、放置したとのこと。この患者の場合、舌が大きくしかも舌低位であるため、下顎のデンチャーに違和感が強く出たものと推察できる。

⑥治療後、右下欠損部にはインプラント治療。それ以外はセラミックにて治療を行なった。左下4番が欠損しているため、左右のアーチをシンメトリーにすることは叶わなかったが、補綴部位はシンメトリーに作成できている。

⑦治療前の右側方面では、臼歯部が後ろへ下がる様な形態になっており、右下へ負担が来ているからなのか歯肉が下がりブラックマージンになっている。

⑧治療後、咬合平面が綺麗になっているのがわかる。右上4、6右下67はインプラント治療を行い、咬合の回復を行なっている。

⑨治療前の左側方面、左上4、5は欠損となっており、左上6、7が重度のカリエスになっている。咬合平面が左上上がりになっているのがわかる。

⑩治療後、咬合平面が綺麗になっているのがわかる。左上4、5はインプラント治療を行い、咬合の回復を行なっている。

⑪初診時のレントゲン写真、右上4に歯根破折を認め、左上6、7にカリエスにより歯冠崩壊している。左上3のファイバーコアが不良で近心にクラックを認めた。

⑫治療後のレントゲン写真、右側上下臼歯、左上4、5部にインプラント治療が行え、咬合支持されています。

⑬、⑭術前と術後のセファログラムの比較です。ブラキオファイシャルタイプと診断。
咬合平面が左右均等になり、咬合高径が挙上されながら、下顎が前方位へ出てきたことにより、IASが8㎜から10.5㎜になり気道が拡大しました。

⑮、⑯術前、術後のPAの比較で、右の咬合平面が右側へ下がっていたのが、術後は左右均等になっているのがわかります。

⑰、⑱治療前後の咬合力の比較。術前は101Nと全く噛めていなかったのが、治療後532Nまで回復しました。ブラキオファイシャルタイプのため、術後に咬合力が上昇する可能性があり、過度な咬合力の上昇は歯の崩壊へ結びつくため、術後に注意が必要です。

⑲左上5部の上顎洞挙上術になります。極力小さなウィンドウを開け、インプラントを埋入。頬側に骨補填を行い、吸収性メンブレンを設置。縫合を行なっております。

⑳、㉑前歯部の歯槽堤増大術になります。前歯の欠損部の顎堤の欠損が大きく審美不良であったため、骨移植並びに歯肉移植を行い、審美性の回復を行なっております。

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