症例① 重度歯周病を包括的アプローチ

①2013年8月17日初診の70歳、女性です。左下が取れたとのことで来院。歯科医院には10年ぶりとのことでした。40歳過ぎまで左上の乳犬歯が残っていたとのことで、30年ほど前に上顎前歯のブリッジと左下の治療、下顎前歯のブリッジを20年ほど前に補綴を行なったとのことでした。全て歯に動揺を認め、入れ歯、インプラントはしたくないと強くおっしゃっていました。

②2018年6月8日の治療終了後の写真です。欠損歯列の改変のために歯の移植、埋伏犬歯の再植、歯周治療として上下の歯の矯正治療による歯肉レベルの改善、歯周外科処置として歯肉遊離移植術、再生療法を行い、セラミッククラウンを用いた歯周補綴(歯を支持している骨の吸収が大きく、動揺が増加した場合にクラウンによる連結固定を行うことにより、咀嚼機能の回復を図る治療)を行いました。プラークを取り除きができる様に歯間鼓形空隙開けて歯ブラシの毛先が通せる様な形態を付与しております。

③初診時のレントゲンです。全体的に根の長さ2分の1以上におよぶ骨吸収、歯の動揺を1~3 度と強く認め、保存が厳しい歯を多数認めます。 ただ、歯槽頂部歯槽硬線(歯の周りの骨の頂き部)が不明瞭な部位を多く認め、骨梁も不明瞭な部位が多いため、治療の反応は良いのかもしれないと考えられました。歯周病の進行と噛み合わせの崩壊が同時に起き、この様な重度の歯周病になったと考えられます。 また、左上3 番は、水平に埋伏し、歯冠部がアンキローシス(骨と歯がついている状態で、通常の治療をしても動きません。)していると思われました。原因としては、不適切な上下のブリッジならびに咬合のコントロールがなされず、放置したことによって歯周病の進行ならびに噛み合わせの崩壊が起きたと思われました。

④治療後のレントゲン写真です。歯周病による炎症と咬合の不安定から来ていた硬化性骨髄炎様(治療前の骨の白い像)の不透過像は全体的に無くなり、歯周病は完治しました。上顎と下顎ともセラミックのブリッジ・連結固定にて治療を行いました。

⑤、⑥2018年6月8日の治療終了後の写真です。
欠損歯列の改変のために歯の移植、埋伏犬歯の再植、歯周治療として上下の歯の矯正治療による歯肉レベルの改善、歯周外科処置として歯肉遊離移植術、再生療法を行い、セラミッククラウンを用いた歯周補綴(歯を支持している骨の吸収が大きく、動揺が増加した場合にクラウンによる連結固定を行うことにより、咀嚼機能の回復を図る治療)を行いました。プラークを取り除きができる様に歯間鼓形空隙開けて歯ブラシの毛先が通せる様な形態を付与しております。

⑦、⑧、⑨は外科的な処置になりますが、この前までに歯周組織ならびに咬合の安定のために1 年半ほどの歯周病の治療を行なっております。どの写真もそうですが、歯肉が赤く腫れているなどの炎症がないのがわかります。

⑦欠損している部位の改変を行うために右下7を右上6部へ移植いたしました。移植は少し深めに埋入し、安定したのちに矯正治療を行なっております。

⑧左上3はCT 撮影を行い歯冠のアンキローシスを確認したため、歯冠を切除し再植を行いました。

⑨左下7は遠心の垂直的に骨が無くなっていたところに、再生療法を行いました。また、右上、左上、右下には硬い歯肉が無かったため、歯肉移植を行いました。

⑩、⑪治療前後の右側方面観です。右上7は右下7を移植した歯になります。治療の中に矯正治療を行なったことにより、歯の軸面を改善しセラミックを連結固定して装着しております。

⑫、⑬ 治療前後の左側方面観です。左上6 は噛み合わせを考慮し、噛む面を金属で修復しております。また、左下5は大きい虫歯であったのですが、治療を通じて経過がよかったため、短い根でしたが、左下6と連結固定を行い保存しております。

⑭、⑮ 治療前後の上顎です。治療前の前歯は、厚みが不適切で色調も悪くかったのが、最初と比較して、広めのU 字歯列になっているのがわかります。また、左右とも最後臼歯は、噛み合わせの安定のために咬合面を金属にしております。左上3 は再植、矯正治療により歯の位置を舌側へ移動しております。

⑯、⑰ 治療前後の下顎になります。治療前は、右下6が舌側へ傾斜しているのがわかります。治療後は左右均等なU 字の綺麗なアーチになっているのがわかります。また、歯の長期維持安定には、歯の歯髄が大切であるため、左下3は歯の神経がギリギリだったため、噛む面をやむなく金属にしております。

⑱初診から約9年経過しておりますが、術後経過も良好です。

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